5度目の香港・4日目 / 香港マラソン(1本目・フル)


2月5日


目覚ましは4時半に設定したが、3:45に目が覚めてしまった。
この程度なら、早く起きる分には、まあ問題ないだろう。
風呂に浸かり、一昨日の晩の中華風パエリアの残りの米のみを食べ、
膝まわり・脛まわりにテーピング、
乳首に絆創膏を貼り、下痢止めを呑み、
ゼッケンをTシャツに付け、装備を調え、
午前5時半過ぎ、ホテルを出てスタート会場の尖沙咀に向かった。

本格的に走り始めて2年ちょっと。
人生初の公式レース、そして初フルマラソンに向かう。


ラン用のadidasのウエストポーチには、
Power Bar2本(ゼリー型)、アミノバイタル2本(ゼリー型)、
電話のみ使用のau携帯、ティッシュ、オブラート型下痢止め薬、
オクトパス(日本でいうSuicaPasmo)を入れた。
iPhoneはショートパンツのポケットへ。
Nike+を起動して、時計代わりにする。



スタート1時間15分前、現場に到着。
招待選手、そして過去に実績のある早いランナーは、
一般ランナーよりも30分前にスタート。
既に準備万端の方々が並んでいた。
その間にトイレに二回行く。
とにかく大きい方を出したかった。出て良かった。
スタート40分前にアミノバイタル1本消費。




早いランナー組は6:45にスタート。
一般ランナー組も整列開始。ボクは何時の間にか一番前にいた。


ウォーミングアップをするしないは、人それぞれ。
ボクはストレッチ以外は極力せずに、
最初の5kmをウォーミングアップと考え、走ることにした。
そうすれば、「37.195kmでいいんだ」という、
ちょっと楽な心持ちで走れるのではないか、と思い。

                      • -


7:15、スタート。
参加人数68535名、うち日本人は650名、フルマラソンは12105名。
高低差+-110m、難コースと言われている。

同時に沢山の飛ばすランナー達に追い抜かれたが、
僕はキロ5:30〜40ペースを崩さない様に。
3km地点でアームウォーマーを外す。
4kmからの4kmが、高速道路に入る為の一番厳しい上り坂。
坂を登り切った8km地点で早めにトイレ(小)に駆け込んだ。
30秒くらいで終了したかな?


10km54分49秒。
10kmから5キロ間で「何て楽しいんだ」と一回目のランナーズハイ状態に。


15kmを過ぎ、香港で一番長い吊り橋、青衣大橋で折り返した頃に、
今まで味わったことのない、
首左後ろ側45度あたりに縦に痛みが走る。
楽しくて目線が若干上を向いてたからなのか。


写真は一回目の折り返し、15.4km地点あたり。
まだ痛みは出てなかった模様(笑)。


ハーフ1:56:57。
ここでPower Bar1本消費。


25km、2時間21分〜22分。
ここでアミノバイタル1本消費。
ここまではキロ5:30ペースで走ることが出来た。
ここから一気にペースが落ちる。
左右の膝上の内腿にも痛みが。
沿道にいた警官が手に持っていた塗り薬を、見つける度にもらって塗りまくる。
気を紛らわす為、ここから給水がある度に水かスポーツドリンクを飲む。


30km2:56:41。
ここでPower Bar、2本目消費。
ペースも保てなくなりサブ4断念。
と同時に、ゴール付近で待つせいこう先生・永友くんチームに電話で連絡。
「だいたい4時間半、11:45頃にはゴール出来るかと」と伝えた。


ここから5キロが二回目の「ランナーズハイ」状態。
何かが、スーッと、身体の中から抜けていった。
(といっても、別に「解脱」とか大袈裟なことではありませんので…)
身体は痛くとも息は切れず、
ペースはキロ6分を過ぎていたが、
楽しいなぁ、また絶対フルマラソンを走ろう、と心に決めた。
34km手前から4キロの海底トンネルを経て、
香港島に戻ってくるまでその状態が続く。
(もしかしたら、下り坂だったからかも、とも思うのだが(笑))


37〜8km、香港島に戻ってからが地獄。
何度も歩いてしまった。
走っても全然進まない。
1キロ毎の表示が中々出てこない。
給水所を見つける度に水やスポーツドリンクを受け取って気を紛らわせる。


40km、確か4時間10分台前半。
最後の高速道路走行から降りてきたところ、
銅鑼灣エリアに入ってきた辺りでサブ4.5は何とかなりそうだろう、と確信。
沿道で応援する方々も一気に増え、沢山の「加油」コールを受け、
ここからは歩かないと決める。
写真は恐らくその頃。


ゴールのビクトリア・パークが見えてきた。
と同時に沿道の仲間達を探すが見つからず。
まあ頭もデカいし、見つけてくれるだろう、と楽観的になり、
あとは転ばない様に心掛けた。


ビクトリア・パークに入り、残り数百メートル。

沿道から、Twitterで相互フォローされている、
香港在住の日本人の方がたまたまボクを見つけて写真を撮ってくれていた。
(結局ボクが走っている姿を肉眼で見たのは、この方だけでした…)


真ん中を走っていたのだが、
ゴール直前になりハーフとフルのゴールが真ん中から別れていることに気付き、
慌てて右のフル側へ。



ゴール。



ネットタイムは4:26:56。
理想としていたサブ4からは遙かに遅れたが、
最低限の目標としていたサブ4.5はクリア。


ゴール直後に応援すると、
「えっ!?ゴールしちゃったの!?誰も確認出来なかった!!」と、
受話器の向こうから大きな笑い声が聞こえてきた。
ちょっとおちんこでた(落ち込んだ)。


ホテルはゴールの真ん前にしていたのが大正解。
混雑を避け、直ぐに部屋に戻ることが出来た。
ホテルのエレベーターにてたまたま一緒だった日本人ランナー、
恐らく50代男性の方に、
「香港で初マラソンなんてどうかしてるね!
 でもここを走れたなら東京なんて楽勝だよ!」と。
ちょいと自信がついた。

                    • -


部屋に戻り、水やスポーツドリンクを補給し、
風呂に入って缶ビールを速攻で2本空ける。
三日振りのビールは、味わう前に、直ぐに空になっていた。


その後、近所のマッサージに行こうと計画していたが、
もうどうにもこうにも身体が動かず、
ホテルのルームサービスのマッサージを呼んだ。
部屋に来てくれたマッサージ師さんに、
「フルマラソンを走った」と英語で伝えたものの、
全く我関せず(笑)、恐らく通常のサービスで60分間、しっかり解してくれた。

                    • -


夕方、晩飯へ出掛ける。
僕にとっての「香港=ここに来る」な店に行く為、
何とかヨチヨチ歩きで向かう。
開店15分前に到着し、席を確保。
店長も「おー!久し振り!勿論覚えてるよ!」と声をかけてくれた。



北角「東寶小館」
06年12月、せいこう先生にここに連れてきてもらって、
僕は香港に完全にハマってしまった。


皆が来る前にメニューを熟読する著者。



南乳風味の揚げ豚手。いわゆる豚足。がっつく。



イカ墨スパゲティ。
いつもはイカ団子だが、今回はイカの切り身。
この味はここでしか食べたことがない。



白胡椒豚ガツスープ。言うならば、胡椒の出汁。
これが辛美味い。



フクロ茸と芥蘭の甘煮。芥蘭の火加減が丁度良い。



そして、遂に主役登場。
シャコのニンニク素揚げ。
これを食べる為に香港に来たといっても過言ではない、と毎回言ってる。
揺るがない。
海老と蟹の美味いところを2で割らない、どっちも詰まっている美味さ。



ビールはキンキンに冷えたお椀で呑みます。
フルマラソン後なので、もう五臓六腑に染み渡りすぎて困る。



せいこうさんが「皆で喰えば怖くない!」と鳩を頼む。
臭みを抜く為に漢方を使ったのだろう、その味が強かったが、
一緒に出てきた酢に付けて食べるとこれが絶品。
左上をご覧下さい。
あ、あ、頭です…。
の、の、脳みそも勿論詰まってました…。



椎茸と腸詰と豆苗の炒め煮。
朝はランナーズハイ。
夜はイーターズハイ。



スペアリブのマヨネーズ炒め。
「シェフのオススメ」と謳っている。
マヨネーズ具合が絶妙。
で、僕はここで撃沈し、中座。


トラムで部屋に戻って布団の中に潜り込むも、
フルマラソンの為に大量のエネルギーを消費した為か、
体温調節が出来ず、
普通なら寒くなんか無い部屋の温度で、身体も歯もガタガタ震えながら寝た。
最後の最後に、マラソンの恐ろしさを体感。

                  • -


フルマラソンを走りきったことで、
人生観が変わったとか、何か違うものが見えてきたとか、
そんな変化は特にない。
完走出来る確信を持つまで、レースに参加しなかったこともあるし、
完走する確信は得た上で、
ある程度のタイムを記すべく練習をしたという自信がつくまで、
じーっと地力を貯めていたのも正直なところである。


だが、やはり少なくともフルマラソンを「走りきった」ことによって、
今まで感じたことのない種類の「精一杯」を体感出来たのは間違いない。


2年前、ボクは体力作り、肉体強化の為にぼんやりと走り始めた。
これからも、可能な限り(本業に支障を来さない程度に)走り続ける所存である。


次の目標は、「歩かない」こと。
それが出来れば、自ずとサブ4も近付いてくるだろう。