MOBY、店継いでくれないか?

3月9日


昨日の3月8日、突然の訃報。
ボクが日本で一番美味しいと思っているカレー屋、
笹塚「M'S CURRY」のマスターが3/7(日)に急逝された、との知らせが、
「M'S CURRY」の付け合わせのコールスローを作っている友人からメールで届いた。

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これは2006年7月に食べた、チキンカレー。
この日の帰り際には、確か「金無いんでしょ」とマスターがビール券をボクにくれたことを覚えている。


初めて「M'S」を訪れたのは、
ボクが笹塚で一人暮らしを始めた2002年の、確か5月。
1月末に引越して来て、間もなく2ヶ月半の全都道府県ツアーに出掛け、
帰って来てから神宮前のカレー屋さん「ヘンドリクス」のワカさん経由に勧められて赴いたのが初めてである。
以降、自分へのご褒美として、月一回くらいで通っていた。
いつも頼むのは、ひき肉のカレーかチキンカレー。
「幻のカレー」と呼ばれた海のカレーも二度程食べたことがある。


程なくして、ボクが音楽をやっていることがバレ、
あまりお客とは話さない、という専らの評判だったマスターが突然ボクに話しかけて来た。


「俺は、味のダニー・ハザウェイを目指してるんだよ」


阿鼻驚嘆であった。
と同時に、この店は間違いない、とも思った。

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1年後の2003年。


今は無き、マガジンハウス「relax」紙から、
好きなカレー屋を5つ紹介して下さい、という依頼が来た。


「M'S CURRY」は取材拒否、というか確かマスターがただ面倒臭い、との理由で、
メディアには滅多に出ることはなかったのだが、
ボクはそんなことは全く知らずに、紹介してしまった。


2003年9月号・第79号に掲載された、
「M'S CURRY」の紹介文を、ここに復刻させてもらうことにする。

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「味のダニー・ハザウェイを目指す」M'S CURRY(笹塚)


カウンター10席を一人で切り盛りする兄ちゃんは、こう言いました。
彼のリズミカルな仕事っぷりに腹ペコにされ、
待ってましたと出てくるは、実に繊細で味わいの深いカレー。特にひき肉カレーは絶品。
更にライスおかわり無料!
食後に貴方を包むメロウ感に、ダニーが見え隠れ。


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掲載後に店を訪れてると、
「だめだよ〜、勝手に書いちゃ〜」とマスターは笑ってぼやいてくれた。
申し訳ない、と思いながらも、
マスターは帰り際にコカ・コーラをくれた。

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また、ある時は、こう言われた。
MOBY、店継いでくれないか?」
…、勿論、丁重にお断りしたのだが、ちょっと嬉しかったりもした。
「海賊FMラジオ局を作ろうと思ってるんだ。MOBYも手伝ってね」とか言われたりもした。


兎に角、その、口数少ないながらも、ぼそっと喋るその言葉の内容が常に「ちょっと」面白く、
間違いないカレーの味、サラダのドレッシングの味と共に、ボクを中毒にさせてくれた。


年賀状も毎年送ってくれて、
いつも最高に馬鹿馬鹿しい写真で笑わせてくれた(とてもここに掲載することは出来ない内容です(笑))

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実は、この1年程、「M'S CURRY」には行けてなかった。
いつも激混みで長蛇の列。
空いてたら入ろう、とずっと思いながらも、行けてなかった。


笹塚界隈に済むミュージシャン仲間からの支持も絶大、
むしろ笹塚の「顔」的な存在にもなっていた、「M'S CURRY」。
もう、食べることは出来ない。


最高にソウル溢れるカレーをありがとう、「M'S」のマスターこと、Kさん。
ボクは、貴方のお陰で、笹塚という街が大好きになり、ずっと住んでます。